1,000軒以上の出店が織りなす、彩り豊かな春の弘法市
京都・東寺で毎月21日に開かれる弘法市。骨董品や古道具、食料品や衣料品など、多種多様な露店が立ち並び、屋台の食べ歩きグルメも楽しめます。境内には1,000軒以上の屋台や露店が軒を連ね、ひとつの小さな街のようなにぎわいに包まれます。
おかむら門をくぐった瞬間、朗らかな活気に満ちています。歩き出す前からもう、楽しい!


私が訪れたのは、春の気配を感じはじめた3月21日。陽光に照らされ木々が豊かにそびえる境内は、歩くだけで心が軽くなるようなわくわくした雰囲気です♪




五重塔の下、屋台が色とりどりに広がり、にぎやかな声であふれています。


【豆知識】弘法市の入口は大きく二つ
いざ露店巡りを始める前に、入口についてちょっとした豆知識をひとつ。
電車利用の場合は南大門(正面入口)側、バス利用の場合は「東寺東門前」バス停を降りてすぐの東門(慶賀門)側がそれぞれ最寄りです。境内にはほかにも複数の出入口があります。
弘法市への来場者の約4割は東の慶賀門から入ります。約3割が南の南大門と穴門から、約2割が北門で、約1割が西門から入ります。
出典:MKメディア
【露店散策】骨董・古着・食器…多種多様な出店たち
さっそく、露店をのぞき歩きます。さまざまなジャンルの出店、多彩な品が所狭しと並び、目移りしてしまいます。



まずは全体の雰囲気を把握するため、軽めに見て回ります。


金堂を背に、テントや露店がにぎやかに並ぶ光景からは、歴史と現代が重なり合う趣を感じます。


着物や和雑貨(着物生地をリメイクしたバッグ)など、色鮮やかなアイテムが目に留まります。
外国人観光客の方も多く見かけました。全体の4割ほどでしょうか。和の趣あふれる雅な品々は、お土産としても喜ばれそうですね。


陶器の食器、花器なども多く見かけます。
シンプルなものから、一枚ずつ手書きの絵柄が施されたお皿まで、バリエーション豊かです。




フランスの蚤の市を思わせる愛らしい雰囲気の、アンティークを扱うかわいいお店も見かけました。(上の写真)品揃えや見せ方の工夫から、まるで小さなセレクトショップのような趣があり、つい見入ってしまいます。


古い人形、置物などを扱うお店もありました。トランクに雑多にまとめられた小物も、レトロな雰囲気が際立って素敵です。(上の写真)くすんだ色や、少し汚れた感じさえ含めて、つい愛着がわきそうです。



もし連れて帰るならどの子にしよう?なんて想像してしまいます。みんなそれぞれにかわいいので、決められませんでした。
ALL 1,000円で販売されている様子も、なんだか、物語の始まりの一場面のようですね。「買ってもらえなかったよ」「しかたないよ」なんてヒソヒソ喋ってるイメージが浮かびました。


一風変わった紙類を扱うお店もありました。(上の写真)
時代を一つひとつ確認したわけではありませんが、昭和初期あたり?(それ以前も?)を思わせる紙ものが山のように積まれ、個人宛ての手紙やはがき、年賀状などがぎっしりと並んでいました。
こうしたコレクションを見るのは初めてだったので興味深かったです。どれも達筆過ぎて内容がわかるものがほぼ無かったのですが、ひとつひとつからかつての誰かの思いの断片、息遣いを感じて、どこか心が揺さぶられるような気分になりました。



この手紙が書かれたのはどんな時代で、どんな暮らしだったのだろうかと想像し、ふと感傷的な気持ちになりました。
弘法市で多く見かける店の種類と傾向
歩きながら感じた限りでは、骨董品や古道具、着物の古着や和雑貨が特に多く、その次に一般の古着や食器・花器などの陶器が多く見受けられました。
【屋台グルメ】さぁ、屋台の時間です。
楽しみにしていた屋台巡りです。弘法市では一体どのような屋台グルメに出会えるのでしょうか…屋台好きとしての使命を果たすべく、丁寧に記録していきます。ぜひご覧あれ。


まずは定番の焼きそばを買いました。容器パンパンに盛られ、ボリュームがありました。





焼きそばで小腹を満たしほほが緩んだところで、次は中華まんに手を伸ばします。
中国で修業した店主さんが手がけている、「唐記麺坊」(とうきめんぞう)というお店です。あんまん、シュウマイ、蒸し餃子など、点心系のお料理を販売されています。湯気が立ち上る様子を見ているだけで、食欲をそそられます…!


王道の肉まんにも心惹かれましたが、せっかくなので少し変わったものを選びたく、「海老にらまん」と「ちまき」を買いました。


ぜひおすすめしたいのが、「海老にらまん」です。緑色が目を引く、ちょっと大きめでずっしりしたサイズ感です。しっかりした味付けとぎゅっと詰まった噛み応えのある食感に、海老の風味もしっかり感じられ、とても美味しかったです!




お次は「たい焼き」。たい焼き自体を撮るのを忘れましたが、店頭の大量のあんこに誘われるがまま、買わずにはいられませんでした。価格は200円とお手頃で、大満足でした。
お次は「びっくりまんじゅう」です。6~10組ほどの行列ができていました。名前のユニークさと普段見かけないもの珍しさに惹かれ、引き寄せられるように並びました。ふわふわの生地に栗が入っていて、美味しかったです。


最後のフードは、「おでん」です!


おでんといえば、仕切りのある四角いお鍋に整然と(お行儀よく)並んでいるかたちをよく見ます。ですが、こちらは大きな丸鍋にいろんな具材が混在しているタイプ。その無秩序だからこその豪快さ、押し寄せるシズル感に圧倒され、一目で心奪われました。
こちらではお酒も注文でき、奥の広い空間で座って飲食を楽しむことができます。


おでんは盛り合わせで、具はおまかせです。



ALL茶色い具の中でピンク色が異彩を放っていた、おでんでは珍しい『かまぼこ』を食べてみたく、「できたら…」と店員さんに声をかけると、こんにゃくと入れ替えてもらえました。
こんな切り方をされた『かまぼこ』も見たことがなく、新鮮で、愉快な気持ちになりました。
相席で座っていた年配のご夫婦の奥さまが、私のお皿を見るなり「(おでんにかまぼこって)珍しいね~。今度私も入れてみようかしら。」と話しかけてくれて、ほのぼのとした会話が生まれました。
【屋台好き必見!】出店内容まとめ



屋台好きの務めとして、どんな屋台が出ていたのかを、記録しておきます。どんな屋台が出店しているか気になる方は、ぜひ、参考にしてください~。
ベビーカステラ
たい焼き
団子
りんご飴・いちご飴
焼きそば
たこ焼き
お好み焼き
広島焼き
びっくりまんじゅう
五平餅
竹の子
やきとり
おでん
玉こん
からあげ
串焼き
中華まん
きんつば
漬物
干し芋
栗


京都ならではの名物としては『すぐき』(※)の屋台も見かけました。鳥取出身の私にはあまりなじみがなく、いまだに屋台で見かけるたびつい注目してしまいます。
※京都の伝統野菜「すぐき菜(カブの一種)」を塩だけで乳酸発酵させた、冬の代表的な京漬物です。



以下は露店(出店)です。たくさんありましたが、ジャンルで分けるとおおむねこのような分類になるかなと思います。
アンティーク・骨董・古美術品
食器・花器
古着
着物
雑貨・和雑貨
装飾品(アクセサリーなど)
珈琲
盆栽・生花
刀・包丁
お香


今回、途中で見かけた『きんつば』を、回る順番の都合で後回しにしてしまい、結局食べないで帰ってしまったのを少し残念に思っています。(上の写真)
遠目でも一般的にイメージするものよりひと回りほど大きく、「きんつばってあんな大きかったけ」と思うほど存在感がありました。
歴史ある弘法市だからこその、日本色豊かな屋台
余談ですが、屋台を見て回っていると屋台のおなじみであるポテトやケバブのような外国風のものはなく、基本的にすべて日本らしいメニューであることに気付きました。
700年以上の歴史と信仰に支えられた格式ある縁日ですから、当然といえば、当然ですね。
弘法大師空海のご遺徳をしのび、御影堂での御影供の法要に多くの人がお参りするようになりました。やがて、ご参拝する人々のために「一銭一服」の茶屋が店を開きました。それから700年あまり。毎月21日、境内は1000店近くの露店で賑わい、弘法市として親しまれるようになりました。
出典元:御影供と弘法市
【合点】笑顔必至!小さな芸人が魅せる可愛い舞台
どこからかマイクの声が聞こえてきて、辺りを見回すと、ちょっとした舞台のような場所で何かやっている様子がありました。近づいてみると、そこには小さな芸人――愛らしいお猿さんの姿がありました。


演目の区切り目だったのか、観客はまだまばらで、ベンチはすべて空席。こんな客入りじゃ、お猿さんも「やる気出ないかも」って気分ではないでしょうか。
迷わず正面から見られる特等席に座り、芸が始まるのを待ちます。
徐々に観衆も集まり、いよいよ始まりです。ジャンプやバランス芸を軽やかにこなすお猿さんのプロっぷりに、前のめりで見入っていました。



懸命な動きと、あっさりとした表情が同居しており、それがまた愛らしい。笑




腰に手を当てエッヘン!と胸を張ったかと思えば、「がんばったよ?」と言わんばかりにすり寄ったりと、観客の心をくすぐる芸達者ぶりに感心し、大笑いしながら拍手を送ってしまいます。
演目終了後、猿回し師さんの「できれば四角いお気持ちを…」の言葉に、「ソリャもっともなことだ」とうなずき、献上とともに「最高でした」と声をかけ、ねぎらいを伝えてその場を後にしました。
ふたり(一人と一匹)の稽古の時間に思いを馳せ、失敗や挑戦を根気強く繰り返したり、「出来たね!」とお猿の努力を讃えたりしている姿が目に浮かびました。舞台裏では、そんな努力の積み重ねがあったのだろうと想像します。これからも元気に活動されることを陰ながら願いました。
【小休憩】ちょっとひと休み、コーヒータイム
よく歩き、よく食べ、よく笑い、そろそろコーヒーでも飲みながらちょっと座ってひと休憩、したくなる頃。


お茶が出来るところを探していると、「コーヒー」ののぼりを発見。




しかも奥に空間があり、座って飲むことができます。まさに理想の場所です。


南大門の横にある空間でしたでしょうか、のれんがかけられ、ちょっとした憩いのスペースのようになっていました。普段は座れない場所でお茶ができる特別感も、弘法市ならではで、良いなぁと思いました。
【買い物】植物を愛で、お気に入りの皿を買う
さて、あらかた見て回り全体の雰囲気も掴めたところで、最後は買い物です。



気になっていたお店をゆっくり見直し、これだと思えるものをじっくり吟味する時間です。
じつはこの一年ほど、キッシュをひと切れ置くのにちょうどよいくらいの、小さすぎず大きすぎない可愛い平皿を探し続けてきました。弘法市で出会えるかもしれないという期待も、今回の楽しみのひとつだったのです。


こちらは『泰青庵』(たいせいあん)というお店です。親しみやすく可愛らしいデザインの染付磁器を制作されています。伝統的な柄や野花などの柄を絵付けした、どこか懐かしく温かい雰囲気が魅力です。
野花の素朴な可愛さを愛する私には、ぴったりしっくりきました。下写真のお皿を3枚購入しました。


ひとつひとつ手描きされているため、同じ絵柄でも微妙に違いがあり、1枚ずつが特別な一点物なのも魅力的です。
また、対応してくださったご婦人の柔らかな物腰とやさしい笑顔が印象に残っています。まるで絵柄の世界をそのまま映したかのような雰囲気で、こころ安らぐひとときでありました。
ほかにも「ブルージーンズ」というデニム生地の色合いをイメージしてデザインされた食器も素敵で、染付でここまでデニムのテクスチャを表現できるものなのかと感動しました。
・このシリーズの名称は「ブルージーンズ」。デニム生地の色合いをイメージしてデザインしたそうです。藍色の釉薬を染み込ませた和紙を貼り付け窯に入れて焼くとこのような素敵な味のある表情に。
出典:泰青庵「ブルージーンズ」シリーズ
ただ食器を買う以上のもの――楽しい思い出も添えて持ち帰ることができ、しあわせな気持ちで、良い買い物になりました。


お次は「植物」を買いに行きます。
入口東門から入ってすぐのエリアに花や木々の並ぶ一角を見つけていたので、スタート地点まで戻ります。


瑞々しい植物が並び、空間全体がフレッシュに感じられます。長かった冬の沈黙を超え、ようやくこれから花の季節が始まるのです。
青空の下、のびのびと植物を愛でつつ選ぶのは開放的で、通常の店舗では味わえない特別さがありました。ご機嫌なホリデー気分がここへ来てさらに高まってきます。


最終的に、ミニ盆栽をひとつと、月桂樹を買いました。月桂樹は高さ140㎝ほどあり大きいのですが、細身でスラリとした姿が気に入りました。


持ち帰りが少し心配だったのですが、細身だったおかげで想像以上に場所を取らず、さらに夕方の嵐山行きの電車は空いていることもあり、最後まで余裕をもって持ち帰ることができました。
弘法市へのアクセス


真言宗総本山 東寺 【教王護国寺】
住所:〒601-8473 京都市南区九条町1番地
URL:https://toji.or.jp/
■近鉄電車をご利用の方
「京都駅」八条口より徒歩15分(約1.1km)
■市バス「松尾大社前」バス停下車
「東寺駅」より徒歩10分(約0.6km)
■京阪電車をご利用の方
「丹波橋駅」で「近鉄丹波橋駅」に乗り換え→「東寺駅」より徒歩10分(約0.6km)
■阪急電鉄をご利用の方
「大宮駅」で下車しバスに乗り換え→市バス18系統、71系統、207系統「東寺東門前」より徒歩1分
【感想】初めての弘法市~境内で巡る小さな冒険~








弘法市は、空海の死去をきっかけに、参拝者でにぎわう日に茶や物を売る露店が立ったことが始まりと伝えられています。歴史ある伝統行事であると同時に、住民の交流や地域経済も支える意義深い催しです。
1,000軒以上の屋台や露店を眺めながら広い境内を歩き回る時間は、さながら小さな冒険のようで、日常では得られない特別な楽しさに満ちていました。ふらりと立ち寄るだけでも十分に楽しめると思います。
そして、普段なかなか楽しむ機会のない「屋台」が、弘法市では定期的に、しかも大規模な祭りさながらに揃う――屋台好きには感激せずにはいられない催しです。またひとつ京都のお気に入りが増えました。
また、露店を眺めつつ歩けるので長時間でも飽きずに散策でき、楽しみながら体を動かせるウォーキングとしてもおすすめです。
さらに、東寺の境内は年間を通して様々な表情を見せます。月ごとに移ろう風景も楽しみにしつつ、ぜひ弘法市に足を運んでみてはいかがでしょうか。


